中小企業の会計に関する指針・中小企業の会計に関する基本要領を適用するメリットとは

全ての株式会社は、各事業年度において計算書類等の作成が義務づけられています。

計算書類とは、株式会社の作成する計算書類や事業報告、附属明細書の総称をいいます。計算書類とは、貸借対照表や損益計算書、株主資本等変動計算書、個別注記表をいいます。

実際のところは、税金(法人税)の申告のために、仕方なく・イヤイヤ(?)ながらも、会計ソフトへの入力(記帳)を行っているんだと考えている中小企業の社長さんや経理担当者は、少なくないと思います。

しかし、一定レベル以上の会計ルールに基づいて記帳を行うことにより、いくつかのメリットを受けることができるのです。

 

会計ルールにはレベルがある

会計ルールには、ルールの厳格さにおいてレベルがあります。

会社と言っても、グローバルに活動する大企業から、地方の有力企業、特定の町に根ざした中小企業、家族経営の会社まで、その規模は様々です。そんな多種多様な会社に、同じ会計ルールを一律に適用することなどできませんし、その必要もありません。

下の図では、会社の種類ごとの会計ルールの位置づけを表しています。上に行くほど会計ルールが厳格であることを示しています。

 

 

 

 

 

 

出典:日本税理士連合会リーフレット「会計ルールを経営に活かす」

上場会社や会社法大会社などは、なぜ厳格な会計ルールを適用するのでしょうか。それは、決算書類の信頼性を高めるためです。

上場会社は国内外の不特定多数の投資家が会社の業績や財産状況をチェックしています。その財務数値がいい加減では、とても信頼して投資することなどできません。また、上場していなくとも、一定規模の会社は株主数もそれなりになりますし、銀行などの債権者も会社の財務状況をチェックしています。つまり、決算書類を利用する利害関係者が多く、誤った財務数値を公開すると影響範囲や損失規模が大きいから厳しい会計ルールに基づく必要があるのです。

では、上図「①〜③以外の株式会社(中小企業)」はどうでしょうか。

実際のところ、中小会計指針や中小会計要領すら適用していない会社が多いと思います。

もちろん、いい加減な決算書類を作っていいわけではないですが、大多数の会社は、中小会計指針をきちんと守った会計ルールを適用するのではなく、顧問税理士のさじ加減が入ったある程度正しい会計ルールを基に決算書類を作成しているのではないでしょうか。

どうしてそうなるかと言えば、税務申告のための会計をすれば足りるからです。

正しい会計ルールを厳密に適用することと、適正な税務申告をすることは必ずしもイコールではありません。わざわざそれなりに複雑な会計ルールを適用するのは手間でしかなく、税金計算として正しければそんなことをする必要はないと考えるからでしょう。

 

中小企業向けの会計ルールは2つある

既に見たように、中小企業向けの会計ルールは、①中小企業の会計に関する指針(中小会計指針)と②中小企業の会計に関する基本要領(中小会計要領)の2つあります。

中小企業の会計に関する指針とは

「中小企業の会計に関する指針(中小会計指針)」は、日本税理士会連合会、日本公認会計士協会、日本商工会議所及び企業会計基準委員会の4団体が、法務省、金融庁及び中小企業庁の協力のもと、中小企業が計算関係書類を作成するに当たって拠るべき指針を明確化するために作成したものです。次の特徴があります。

  • 中小企業が計算書類を作成するに当たり拠ることが望ましい一定の水準を保った会計処理を示している
  • 会計参与設置会社(税理士等が会計参与に就任し、取締役と共同して計算書類を作成する)では拠ることが適当とされている

中小会計指針

 

中小企業の会計に関する基本要領とは

「中小企業の会計に関する基本要領(中小会計要領)」は、中小企業団体、金融関係団体、企業会計基準委員会及び学識経験者が主体となって設置された「中小企業の会計に関する検討会」が、中小企業庁、金融庁及び法務省の協力のもと、作成されたもので、中小企業の多様な実態に配慮し、その成長に資するため中小企業が会社法上の計算書類等を作成する際に参照するための会計処理や注記等が示されています。次の特徴があります。

  • 中小会計指針と比べて簡便な会計処理をすることが適当と考えられる中小企業が利用することを想定して策定されたもの
  • 中小企業の実態に配慮し、税制との調和や事務負担軽減の観点から、多くの中小企業の実務で必要と考えられる項目に絞って簡潔な会計処理等を示している

中小企業の会計に関する要領

 

会計ルールを適用したらどんなメリットがあるか

一定の会計ルールに基づいて記帳するとどんなメリットがあるのでしょうか。

大まかに言えば、計算書類における会計数値の正確性が高まることによるメリットを享受できます。具体的には次の通りです。

経営分析に役立つ

正確な会計数値により自社の状況が明らかになるため、投資判断や経営改善等を的確にできるようになります。

また、正確な会計数値が毎期継続して記録されるようになると、過年度比較が正確となり、分析の効果がより高まります。

 

対外的な信用力が高まる

正確な会計数値を、金融機関や取引先等に示すことができるようになる結果、信用力が向上するため、スムーズな資金調達や取引先拡大につなげることができるようになります。

金融機関融資では、中小会計指針を適用したことを確認するためのチェックリストを提出することによって、融資の際に金利や信用保証料などの優遇を受けることができるほか、無担保融資などの優遇された融資制度を利用することができます。

また、補助金によっては、申請時に活用することができます。

中小企業の会計に関する指針」の適用に関するチェックリスト

 

まとめ

一定の会計ルールを適用することによりメリットを受けられることは、一定水準以上の会計ルールを適用するインセンティブとなります。

私の経験では、上記のようなメリットを受けることを目的としなくとも、著しく成長する会社は、創業時から一定水準以上の会計ルールを自ら進んで適用しようとします。

理由は、優れた経営者は、正確な会計数値をタイムリーに確認することにより、自社の状況をいち早く適切に把握したいと考えるからです。経理体制も含めたバックオフィスを強化することを重要と考え、必要なコストは惜しまず投資する傾向があります。